エコ散歩
色づくイチョウやモミジを愛でながら明治神宮の森を散歩しました。
2024-12-07
12月7日(土)、晴天に恵まれ、師走の明治神宮の森を歩きました。森の案内は森びと植生アドバイザーの中村幸人東京農業大学名誉教授。3回目となる今回は、12月に紅葉がはじまるという東京の「遅い秋」の森を散歩しました。
クスノキやスダジイ・カシ類など常緑広葉樹の森の中に点在する黄色く色づいたイチョウやケヤキ、紅く色づくモミジなどを観察しながら森内を歩きました。ガイドの中村先生より、落葉広葉樹の紅葉の仕組みが説明されました。(写真➀)
「葉が緑色に見えるのはクロロフィルの緑が反射して見えるため。秋になって気温が4℃以下になり、日照時間が短くなると光合成の機能が低下するため、植物はエネルギーの基になる糖類やアミノ酸類を蓄えるために光合成を休み、葉を落とします。紅葉の赤色(写真②)は紫外線が作用してアントシアニンという紅い色素が生成され、黄葉の黄(写真③)はもともと葉の中に存在するカルテノイドという黄色い色素がクロロフィルの分解によって見えるようになったものです。」
また、1年中緑の葉をつけ光合成を起こす常緑樹(葉が厚い)と4月から11月ぐらいの期間しか葉をつけない落葉樹(葉が薄い)の違いを教えていただきました。
林床には赤い実をつけたセンリョウや黒い実をつけたネズミモチが生え、樹上を眺めるとイイギリの木に赤い実の房がたくさんつけていました。イイギリ(写真④)は熟すまでは鳥に食べられないように毒を持ち、熟すと一斉に鳥が食べにやってきます。森の中は木の実を食べる鳥たちの鳴き声が響き、忙しそうに飛び回っていました。食べた種をフンと一緒に森に落とす「フン散布」によって、動けない木々の子孫が明治神宮の森の中に広がっている様子も見ることができました。
人間は森を壊すことも出来ますが、森をつくることも出来ます。100年前、先人が広葉樹を植えて森をつくり、植物だけでなく、鳥、動物、土の中には色々な小動物(写真⑤)がいて豊かな生物層が育まれてきました。きっかけは人が森をつくったことです。
中村先生は師である故・宮脇昭先生から「人間は生態系の一員である以上、人間だけが生き延びることはできない。他の生物との共生の中で共存していくしかない。」と教えられたことを伝えてくれました。まさに今、私たちはそれを実行させないとこの地球上で生きていくことができなくなります。
参加者の皆さんからは「100年で森ができる。鳥が種を運んでくる。感動し、楽しく学べた」「戦争があると、こういう豊かな森も一瞬で壊されてしまう」など感想をいただきました。(写真⑥)
神宮外苑の森では100年の木々を含め多くの木々の伐採がはじまりました。森を壊すのは簡単ですが、壊した森を土地本来の森に戻すには数百年の年月が必要です。生物社会の一員でしかない私たち人間は、この都内に残る貴重な「いのちの森」に生かされていることを気付かされる散歩となりました。