本文へ移動

エコ散歩

エコ散歩

秋雨に洗われる明治神宮の森を散歩しました。

2024-10-05
①倒木で空間が出来た林内
②林縁に生えるヤブミョウガ
③ケヤキの根に生えるナラタケモドキ
④切り株に生えるカワラタケ
⑤土壌を改良するツヤタマゴダニ(1.2㎜)
⑥樹齢100年を超えるクスノキの巨木
 10月5日(土)、小雨が降る中、森びと植生アドバイザーの中村幸人東京農業大学名誉教授の案内で明治神宮の森を散歩しました。2回目となる今回は、森の木々の遷移と共に倒木を分解するキノコ(菌糸類)の観察を行いました。
 100年前に日本各地から持ち込まれた木が植えられました。先駆けとなるスギ・ヒノキ林から、その土地本来の常緑広葉樹の森にする計画も100年より少し早まり、90年で入れ替わっているようです。
 広葉樹に覆われたスギ・ヒノキなどの針葉樹は光が当たらなくなり、やがて枯れていきます(写真①)。地球温暖化の影響でカシ類にも「カシノナガキクイムシ」が入り込み、樹勢が弱まり枯れ始めていました。
 秋の林縁にはヤブミョウガ(写真②)が黒い実をつけていました。倒木や切り株にはキノコ(写真③)や色々な文様のサルノコシカケ(写真④)が生えていました。自然がつくり出す芸術作品のようです。
 落ち葉は土の中に住むササラダニ(写真⑤、1円硬貨の✚の幅は3mm)やダンゴムシ、ミミズなどの土壌動物が食べて分解し土に還していきますが、倒木や切り株にはセルロースやリグニン(有機物素材)があり分解することが出来ません。木材腐朽菌のシイタケやナメコはこのセルロースを分解し栄養分にします。また、生きた木と共生するマツタケやシメジなどは菌糸を土の中に張り巡らせ植物の根と共生し、菌根をつくり窒素やリン、カリ、水分を植物に提供します。植物は光合成でつくった糖類を菌類に与えます。
 普段見過ごしがちな林床に生える小さなキノコたちが、樹木の生長を助け遷移に大きな役割を果たしていることがわかりました。色々な植物や昆虫、動物たちがそれぞれに役割を持ち生態系を構成しています。人間もその一員であり、森に寄生してしか生きられない存在であることを謙虚に受け止めました。
 本殿の北側の林道には根元から10本ほどの枝分かれした「ヤマタノオロチ」のようなクスノキの巨木(写真⑥)が樹冠を広げていました。中村先生は、「幼木時代に幹が切られ萌芽したもので、まっすぐ枝を伸ばせるものと、光を得るために横に枝を伸ばしていったものではないか」ということでした。そして、林床に次世代となるクスノキの実生・幼木が生えていないことから「一代」で一生を終え、自然環境に応じて土地本来の木々に遷移していくにはあと300年はかかると話されました。
 明治神宮外苑の森では樹齢100年の木々を含め多くの木々が伐採されようとしています。森を壊すのは簡単ですが、壊した森を土地本来の森に戻すには数百年の年月が必要であり、都内に残る貴重な「いのちの森」を守っていかなければなりません。
 
TOPへ戻る